はじめに
こんにちわ、爪川です
今回の記事では脳振盪後のリハビリで行う有酸素運動の強度設定と進め方について、以下の文献を参考に見ていきたいと思います
脳振盪を負ってしまったあとは症状が改善したからといってすぐにスポーツに復帰するのではなく、段階的に競技復帰を目指していきます
多くの場合は脳振盪を受傷してから24−48時間は脳と身体を休ませ、その後に症状の改善が見られれば低強度の有酸素運動を行なっていきます
ただし、この有酸素運動を行った時に症状が悪化してしまう場合もあります
その場合や脳振盪の症状が長期化している場合、症状の悪化を最低限に抑えつつ有酸素運動を実施していきます
では、具体的に有酸素運動をどう行うのでしょうか
脳振盪と有酸素運動 実践
理想的な有酸素運動の強度設定と進め方は、まずテストを行いどの程度まで心拍数が上がる有酸素運動なら大丈夫か、そしてその後に大丈夫な心拍数の範囲で有酸素運動をその後続けていきます
ただしこのテストを行う為の器具がなかったり、有酸素運動時の心拍数を測定する装置がない場合は違った方法を取ります
ですので、この文献では3種類の有酸素運動の強度設定と進め方を紹介しています
その3種類は以下となります
①運動テストの実施、心拍数を測定して有酸素運動
②運動テストの実施、心拍数を測定せず有酸素運動
③運動テストの未実施、心拍数を測定しての有酸素運動
①運動テストの実施、心拍数を測定して有酸素運動
このシナリオでは運動テストも心拍数を測定する装置もある前提です
運動テストはバッファロー脳振盪トレッドミルテスト(BCTT)やバッファロー脳振盪バイクテスト(BCBT)を行います
※バッファロー脳振盪トレッドミルテストについての詳細はこちらの記事をご覧ください
※バッファロー脳振盪バイクテストについての詳細はこちらの記事をご覧ください
これらの運動テストでどの程度の心拍数で症状が悪化するのかを確かめます
例としてここでは心拍数が140になると症状が悪化したとします
その場合、有酸素運動の強度は140という心拍数の90%±5になるように設定します
140の90%なので126が有酸素運動の目標強度となります
そして実際に有酸素運動を行う時は、5分間ほどウォームアップを行いこの126まで心拍数を上げ、その心拍数±5を20分間維持します
そしてこの有酸素運動を1−2週間おこなった後に運動テストを再度行い、初回よりも高い心拍数まで症状の悪化がなく運動が行えるか、もしくは症状の悪化が起きなくなっているかを調べていき、最終的には有酸素運動では症状の悪化が伴わない状態を目指します
②運動テストの実施、心拍数を測定せず有酸素運動
このシナリオでは運動テストに必要な器具はあるものの、脳振盪を受傷した選手や患者が自宅などで有酸素運動を行う際に心拍数を測定する器具がない場合を想定しています
このシナリオでもまずは運動テストを実施して、どの程度の運動強度だと症状が悪化するかを調べます
ただし、ここでは心拍数で強度設定は行いません
上記の運動テストでは運動のレベルを1−20に分けていますが、この運動のレベルで強度設定を行います
レベルの数字が上がるにつれて強度が上がっていきますが、症状が悪化した時のレベルで有酸素運動の強度を決定します
そしてどのレベルで症状が悪化するかが判明したら、以下の表を指標にして有酸素運動を行います
例えばレベル10(英語ではStage 10)で症状が悪化した場合、バイクを用いた有酸素運動では8.0METsという強度に設定します
METsとは”Metabolic equivalent of task”の略で、運動強度を示す数値の1つと考えてください
アメリカでは有酸素運動のマシン(バイクやトレッドミルなど)でこのMETsが表示される機材が多いのでこの数値を基に有酸素運動を行います(日本ではこのMETsはどうだったか記憶があいまいですが、、、)
有酸素運動は20分間継続して行い、2日続けて同じ運動強度で症状の悪化がなければ次のレベルに進みます
③運動テストの未実施、心拍数を測定しての有酸素運動
最後のシナリオは運動テストの器具はなく、心拍数を測定する物はある場合です
この場合はどの程度の強度だと症状が悪化するのか、逆にどの程度の強度までなら大丈夫かという事がわからない為、有酸素運動の強度はかなり慎重に設定する必要があります
それゆえに心拍数を測定する装置は必ず必要になってきます
ここでの運動強度の設定は年齢を用いた計算でターゲットとなる心拍数を設定します
まず220より運動を行う方の年齢を引きます(例:脳振盪受傷者が20歳なら、220-20=200)
そこで出てきた数字の50%が始めの運動強度となります
ですので、この場合は200の50%である100が心拍数のターゲットとなります
この強度で有酸素運動を20分間行い、2日連続で症状の悪化がなければ強度を上げます
強度は5%ずつ上げていきます(例:200の5%は10なので、100の次は110が次の心拍数のターゲットになります)
これを続けていき、80%の運動強度で有酸素運動が実施出来るようになるまで続けます(例:200の80%なので160まで心拍数を上げることが目標になります)
まとめ
今回は脳振盪リハビリで行う有酸素運動の強度設定と進め方についてまとめてみました
より詳細な内容は参照資料1にありますので、ご確認ください
本日も最後までお読み頂きありがとうございました
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