はじめに
こんにちわ、爪川です
今回の記事ではラグビー選手の神経変性疾患のリスクを探った研究を見ていきたいと思います
スポーツ選手において、現役時代の「脳振盪」や「繰り返しの頭部への衝撃(Repetitive Head Impact)」は神経変性疾患のリスクを上げる可能性があるのではないかと国際的に議論されています
それに関してまとめた記事はこちら↓
代表レベルのラグビー選手の神経変性疾患のリスク:スコットランドの調査
概要
この研究のおおまかな概要です
・スコットランド代表歴のあるラグビー選手と一般人の「神経変性疾患の発生率」と「死亡率」を比較
・対象は男性のみ
・既に死亡している人のデータも含め、ラグビー選手は計412名、一般人は計1236名のデータを使用
・ラグビー選手のデータは1900-1919年生まれが47名、1920-1939年生まれが91名、1940-1959年生まれが89名、1960-1979年生まれが109名、1980-1990年生まれが76名
・一般人はラグビー選手と年齢や社会経済的地位がマッチするようにデータベースから被験者をコンピューターが自動抽出
神経変性疾患のリスク
ラグビー選手と一般人で神経変性疾患に患った方の比較です
計 | 神経変性疾患の診断 | |
ラグビー選手 | 412人 | 47人(11.4%) |
一般人 | 1236人 | 67人(5.4%) |
このように一般人と比較するとラグビー選手の方が比率的に多く神経変性疾患の診断を受けていることがわかります
上の数値は神経変性疾患の診断となった方の数ですが、それ以外に神経変性疾患による死亡、入院、薬の処方もラグビー選手が高くなっています👇
計 | 神経変性疾患の診断 | 死亡 | 入院 | 薬の処方 | |
ラグビー選手 | 412人 | 47人(11.4%) | 32(7.8%) | 21(5.1%) | 24(5.8%) |
一般人 | 1236人 | 67人(5.4%) | 39(3.2%) | 37(3.0%) | 28(2.3%) |
診断 | 死亡 | 入院 | 薬の処方 | |
ハザード比 | 2.67 | 2.60 | 2.29 | 4.59 |
死亡率
次にラグビー選手と一般人の間で主要な死因に差がないかを見ていきます
スコットランド人男性の主な死因は循環器系、呼吸器系、癌です
調査をした時点で、ラグビー選手412名中121名が死亡、一般人1236名中381名が死亡していました
下の表はラグビー選手と一般人の主要な死因別の人数を比較したものです
計 | 死亡者数 | 循環器系 | 癌 | 呼吸器系 | 神経変性疾患 | |
ラグビー選手 | 412人 | 121人(29.4%) | 54(13.1%) | 30(7.3%) | 11(2.7%) | 11(2.7%) |
一般人 | 1236人 | 381人(30.8%) | 155(12.5%) | 108(8.7%) | 43(3.5%) | 18(1.5%) |
死亡者数 | 循環器系 | 癌 | 呼吸器系 | 神経変性疾患 | |
ハザード比 | 0.86 | 0.89 | 0.77 | 0.62 | 2.43 |
この表の様にラグビー選手は一般人と比較し主要な死因は神経変性疾患以外の循環器系、癌、呼吸器系では低いことがわかります
まとめ
今回のまとめです
今回の調査対象のラグビー選手では比較対象の一般人と比較し
- 神経変性疾患の診断、それによる死亡、入院、処方薬の比率が高い
- 主要な死因では神経変性疾患以外では一般人よりも相対的危険度は低い
ちなみにラグビー選手のフォワードとバックスのポジションによる神経変性疾患へのリスクの違いはありませんでした
ちょっと考察
今回の結果を見るとスコットランド代表歴のあるラグビー選手は一般人と比較すると神経変性疾患の相対的危険度が高いことが示唆されます
ただしこのデータはかなり昔の方の情報も含んでおり、脳振盪を含めた頭部への衝撃に対してより厳格な対応をしている現代においてはそのまま当てはめるのは難しいかもしれません
ですので現代の対応が十分かどうかはまだわかりませんが、選手の健康・ウェルフェアの観点では今回の様なデータの収集とその結果に対しての対応策の施行が継続的に必要なのかと思います
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