Concussionとmild Traumatic Brain Injuryの違い:前編

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こんにちわ、爪川です

今回の記事では「Concussion(脳振盪)」「mild Traumatic Brain Injury(軽症頭部外傷)」の診断基準について、つい先日発表された論文を参考に見ていこうと思います

前編の今回はそれぞれの診断基準について簡潔に触れ、後編では詳細を見ていきます

Concussionとmild Traumatic Brain Injuryの違い

脳振盪は大きな括りで言うと頭部外傷の1種類になります

頭部外傷にはその重症度に応じて軽症〜重症で分類されますが、脳振盪はこの軽症の部類に入ります

ですので脳振盪=軽症頭部外傷ではないのですが、そこの境界線は曖昧な場合が多く感じていました

そのような中でAmerican Congress of Rehabilitation Medicineという学会が明確な基準を発表していましたので、それを見ていきたいと思います

American Congress of Rehabilitation Medicineによる基準

参照資料より

American Congress of Rehabilitation Medicine (ACRM)はmild Traumatic Brain Injuryの診断基準に関して以下のように発表しました

Mild Traumatic Brain Injuryの診断は6つの基準を満たし、且つ3つの指標がない場合とする

<6つの基準>

基準1:生体力学的に妥当性の高い受傷起点が先行し、

基準2;頭部外傷に起因する徴候が1つ以上あり、

基準3:症状が2つ以上あり、

基準4:頭部外傷に起因する臨床検査やラボラトリー検査の所見が1つ以上あり、

基準5:CTやMRIで頭部外傷の神経画像所見があり、

基準6:交絡因子が基準2、3、4の症状、兆候、所見に十分な説明がつかない場合

以下の3つの指標が1つでも当てはまる場合、Mild Traumatic Brain InjuryではなくTraumatic Brain Injuryとなる

指標1:30分以上の意識消失

指標2:30分後のグラスゴーコーマスケールが13点未満

指標3:外傷後健忘症が24時間以上続く

また、基準5の画像所見に関しては以下のようにも付け加えています

・神経画像に異常があった場合、”mild traumatic brain injury”の単語の後に”頭蓋内の器質的損傷の神経画像所見あり”と付け加える

・神経画像に異常がなかった場合、”mild traumatic brain injury”の単語の後に”頭蓋内の器質的損傷の神経画像所見なし”と付け加える

・もし神経画像検査が行われなかった場合、追加の文章は加えない

そしてconcussionとmild traumatic brain injuryの違いですが、それは以下のように定義されています

脳振盪という診断名は、神経画像所見がない(もしくは適応でなかった)mild traumatic brain injuryの場合で代わりに使用できる

ですので、ACRMでは「mild traumatic brain injuryの基準5以外を満たし、且つ3つの指標にも当てはまらない場合」に脳振盪という言葉を使用できるとしています

言い換えると画像所見で異常があれば、それは脳振盪ではなくmild traumatic brain injuryになります


前編はここまでです。後編では上記の基準についてもう少し詳細を見ていきます

まとめ

今回のまとめです!

  • American Congress of Rehabilitation Medicineがmild traumatic brain injuryの診断基準を発表
  • そこにはconcussionとmild traumatic brain injuryの違いも明記
  • Mild traumatic brain injuryは6つの基準を満たし、且つ3つの指標に当てはまらない場合が診断基準となる
  • Concussionはmild traumatic brain injuryの中でも、画像所見がない場合に代わりに用いることができる

参照資料

Silverberg ND, Iverson GL; ACRM Brain Injury Special Interest Group Mild TBI Task Force and the ACRM Mild TBI Definition Expert Consensus Group, ACRM Brain Injury Special Interest Group Mild TBI Task Force members; Cogan A, Dams-O’Connor K, Delmonico R, Graf MJP, Iaccarino MA, Kajankova M, Kamins J, McCulloch KL, McKinney G, Nagele D, Panenka WJ, Rabinowitz AR, Reed N, Wethe JV, Whitehair V; ACRM Mild TBI Diagnostic Criteria Expert Consensus Group; Anderson V, Arciniegas DB, Bayley MT, Bazarian JJ, Bell KR, Broglio SP, Cifu D, Davis GA, Dvorak J, Echemendia RJ, Gioia GA, Giza CC, Hinds SR 2nd, Katz DI, Kurowski BG, Leddy JJ, Sage NL, Lumba-Brown A, Maas AIR, Manley GT, McCrea M, Menon DK, Ponsford J, Putukian M, Suskauer SJ, van der Naalt J, Walker WC, Yeates KO, Zafonte R, Zasler ND, Zemek R. The American Congress of Rehabilitation Medicine Diagnostic Criteria for Mild Traumatic Brain Injury. Arch Phys Med Rehabil. 2023 May 19:S0003-9993(23)00297-6. doi: 10.1016/j.apmr.2023.03.036. Epub ahead of print. PMID: 37211140.

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