はじめに
脳振盪を受傷すると発生する症状の1つに「めまい」があります
めまいの原因は多岐にわたりますが、耳の中にある身体のバランスを司る機能(前庭機能)の低下や目の機能の低下などで起こることがあります
脳振盪が起きた際にはこれらの機能に障害がないかどうかを調べる必要があります
ただ、この前庭機能や目の機能は行っているスポーツによっても影響を受けます
例えばフィギュアスケート選手がジャンプなどでクルクル回ったとしても目が回ることはありませんが、普段はそのような動きをしないスポーツの選手が実施すれば、目が回ってしまいます
このようにスポーツによって必要とされるバランス機能の基準は異なることが予想されます
今回ご紹介する文献は「スポーツ間でバランス機能の違いをあるのか?」というのを探っています
また、もしその様な違いが客観的数値で示すことが出来れば、脳振盪からリハビリを経て復帰する際にバランス機能が正常の値なのかを指標にもなり得ます
ただ、今回の記事はこの文献自体に関してのまとめは簡潔にしており、この研究を通して私が感じたことを考察にまとめています
バランス機能の違い:サッカー選手とアイスホッケー選手を比較した文献を参考に
この研究ではエリートレベルのサッカー選手、アイスホッケー選手、一般人のバランス機能をチェックし、その違いを探っています
バランス機能はBESS(Balance Error Scoring System)というテストとVideo Head Impulse Testという2つの方法で計測されました
BESSは脳振盪の後にもよく使用されるテストで、必要な器具も最小限で行えます
Video Head Impulse Testは頭を急に動かした時の反射的な目の動きでバランス機能をチェックするテストです
この研究結果を先にお伝えすると、Video Head Impulse TestでもBESSでもサッカー選手はアイスホッケー選手や一般と比較してより統計的に有意な違いが見られました
ただ、この研究はいくつか注意する点がありますのでここの記載しておきます
・被験者の数がサッカー選手、アイスホッケー選手、一般で大きく違っている
・サッカー選手は男女、アイスホッケー選手は男性のみの被験者
・アイスホッケーは氷上での競技、サッカーは地面での競技なので、そもそもバランス機能に違いは出やすいのではないか?ここでサッカーとラクロスのようなどちらも地面の上で行うスポーツであればどうなのか?
上記の様に結果に影響を与えうる要素はありますが、この研究ではエリートレベルのサッカー選手とアイスホッケー選手ではバランス機能に客観的な違いがあったとしています
※ちなみに文献ではVideo Head Impulse Testでのangular vestibulo-ocular reflex (aVOR)の数値なども詳細に載っています。ここでは簡潔にするために載せませんでしたが、ご興味のある方は参照文献よりご確認ください
考察
ここではこの文献を通して私が感じたことをまとめたいと思います
・スポーツによって求められるバランス機能(前庭機能)は異なるので、脳振盪のリハビリもそこを加味する必要があるのではないか。ただし、基本は一緒
例として前十字靭帯手術後のリハビリがわかりやすいかと思いますが、基本的に抑えておかなければいけないことはどのスポーツでも共通してありますが(例えば可動域や筋力)、スポーツによって求められる動きは違ってきます
柔道、ラグビー、卓球では同じ前十字靭帯手術後のリハビリだったとしても、求められる動きが異なるので、リハビリやトレーニングもそれを加味する必要があります
これと同じで、脳振盪からスポーツに復帰するためのリハビリも、求められる前庭機能に違いがあればそれを考慮する必要があるのではないかと考えています
ただし、スポーツ毎で違いはあっても基礎となる部分は一緒なので、脳振盪後のリハビリが大きく変わるわけではないと思います
そして現時点で何をどの程度考慮すればいいのか、はっきりしたことは私自身不明です
ですが、上記の研究の様にスポーツによってバランス機能に違いは出てくるので、研究結果を見たり試行錯誤しながら探っていくのがいいかと思っています
・Video Head Impulse Testなどは科学技術の進歩によって現場でも可能になる?
ヘルスケアの分野も科学技術の進歩で以前では考えられなかったことが容易に出来る様になっています
例えば血液の酸素飽和度は今ではスマートウォッチで計測出来ます(どこまで精確かはわかりませんが)
Video Head Impulse Testは頭を動かした時の目の反射的な動きを見ますが、これもスマートフォンと何かしら手軽な器具を用いてどこでも出来る様になるかもしれません(もしかしたら、もうどこかにあるかもしれませんが)
そうなれば例えばスポーツチームのアスレティックトレーナーが脳振盪から復帰過程の選手に対して使用出来たりすることも考えられます
おそらく技術的には既に可能なんだろうなと勝手に想像しますが、科学技術の進歩で今まで出来なかったこと出来る様になり、スポーツ現場や選手の安全にプラスに働ければと思います
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
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