はじめに
脳振盪とは脳の怪我の1つです
頭をぶつけたり、頭をぶつけていなくても身体への衝撃が脳に伝わることでも脳振盪は起こり得ます
脳振盪の症状は頭痛や吐き気、集中できない、眠れない、イライラするなど非常に多岐にわたります
スポーツや日常生活で脳振盪を疑った場合はすぐに脳神経外科などの専門医の受診が必要ですが、脳振盪の難しいところはレントゲンやMRIといった画像検査では異常が見つからなかったことです
それゆえ「異常がないから大丈夫」というような、非常に危険な状態に陥る可能性もありました
ただ、現在では研究が進んで画像検査でも脳振盪の状態がわかる様になりつつあります
今回の記事ではそのような脳の画像検査によって、脳振盪を受傷してから1年後では脳に何か構造的な変化があるのかを探った記事をご紹介します
脳振盪になると脳はどうなるの?1年後の脳画像と比較した研究
この研究では脳振盪を負った患者48名の脳画像をチェックし、その1年後の脳画像と比較することで脳に構造的な変化があったかを探っています
この患者はスポーツ選手ではなく、一般の方で自転車での転倒や交通事故などで脳振盪を受傷した方を対象としています
また、脳振盪を受傷した患者だけでなく、整形外科的な怪我(例えば骨折など)を負った患者37名の脳画像もチェックし、両者の違いを比較しています
脳画像は受傷から6週間後と1年後にどちらのグループも撮影し、グループ間の違い、そして同じグループ内での6週間後と1年後の脳の違いを比較しました
脳画像でチェックする脳の部分は灰白質と白質という部分です
灰白質は脳の神経細胞の部分、白質は神経細胞同士がコミュニケーションする為の電線のような部分です(脳振盪ではこの白質の部分に影響が出ると考えられています)
結果
この研究ではいくつかの興味深い結果が出ました
結果1:脳振盪受傷者では6週間後と1年後の脳画像を比較した時に、部分的に灰白質と白質のどちらも低下していることを示唆した
その部分は右 rolandic operculum、右島皮質、右中前頭回、右上側頭極
結果2:脳振盪受傷者では6週間後と1年後の脳画像を比較した時に、部分的に白質が増加していることを示唆した
その部分は左 rolandic operculum、左島皮質
結果3:2つのグループの間では、6週間後も1年後でも脳画像に統計的に有意な差は見られなかった
まとめ
今回の研究では脳振盪受傷者の脳画像を受傷6週後と1年後に撮影した場合、脳の灰白質と白質で部分的な低下、また一部の白質では増加を示唆する結果が得られました
ただ、その増減なども含めてもう1つのグループの脳画像と比較すると、両グループの間には統計学的に「違いがある」と言えるまでの差はなかったとの結論になりました
つまりこの研究内で限って言えば、「脳振盪を受傷してから1年後では脳に何かしらの構造的変化が起きている可能性はあるものの、非脳振盪受傷者と比較するとその差は明らかではない」ということになるのかなと思います
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