はじめに
スポーツには意図的な身体と身体の接触を伴う種類、伴わない種類があります
接触を伴わないスポーツは例えばバレーボールやテニス、卓球、陸上競技があります
逆に意図的な接触伴うものではラグビーやアメリカンフットボール、武道や格闘技などがあります
ラグビーは対戦相手へのタックルを含む激しい接触を含むコリジョン(Collison:衝突)スポーツなので、その分怪我のリスクも高くなる傾向にあります
そして脳振盪も含めて、ラグビーではタックルの際に怪我が発生しやすいとされています
タックルはタックルをする選手(タックラー)とタックルをされる選手(ボールキャリアー)の間で起こりますが、ワールドラグビーやその他の研究でボールキャリアーよりもタックラーの方が脳振盪(頭部外傷)のリスクが高いことがわかっています(ワールドラグビーが脳振盪低減の為に行った施策に関するブログ記事はこちら)
今回ご紹介する文献では、タックラーがどのような姿勢でタックルを行うと頭部外傷のリスクが高まるのか、またボールキャリアーの場合ではどうなのかを探っています
ラグビー:タックル姿勢と頭部外傷のリスク、NRLの研究から
この研究はNational Rugby League(NRL)と呼ばれるラグビーリーグの2017と2018の2シーズン全ての試合とプレイオフトーナメントの試合の合計402試合において、どのようなタックル姿勢が頭部外傷に繋がったかを調査したものです
この2シーズンで合計472の頭部外傷が発生しましたが、その内の446(94.5%)がタックルの際のものでした
この446の頭部外傷でタックラーに起こったものは283、ボールキャリアーに起こったものは163でした
タックル時の姿勢と頭部外傷のリスクの関係
・タックラーもボールキャリアーも直立位(Upright Position)でタックルに入る場合が頭部外傷に至るケースが最も多かった
・タックラーが直立位だった場合、腰をかがめたタックル姿勢(bent at the waist)と比較すると1.9倍、ダイビングタックル(Diving Tackle)より1.4倍ほど頭部外傷に至る確率が高くなった
・ボールキャリアーの場合、直立位でのタックルをされる場合が最も頭部外傷に至るケースが多く、次に転倒もしくはダイビング(Falling or Diving)が多く、腰をかがめた姿勢(bent at the waist)が一番少なかった
・タックラーとボールキャリアーのどちらも腰をかがめた姿勢(bent at the waist)でタックルのシチュエーションに入ることが最も頭部外傷に至るケースが少なかった
・タックラーでは、タックラーの頭部がボールキャリアーの頭部・肩・臀部に当たることが最も頭部外傷に至るケースが多かった。また頭部や肩ほどではないものの、ボールキャリアーの膝やスパイクに当たることも頭部外傷に至るケースが比較的多かった
・ボールキャリアーでは、ボールキャリアーの頭部がタックラーの頭部・肩・腕に当たることが最も頭部外傷に至るケースが多かった
まとめ
今回の研究ではタックラーもボールキャリアーも直立位でタックルシチュエーションに入ることが頭部外傷に至るケースが最も多いとの結果になりました
ラグビー現場では高すぎるタックルや低すぎるタックルは怪我につながるので、この研究結果も肌感覚でわかっていたのではないかと思います
適切なタックルテクニックというのはタックラーとボールキャリアーのどちらの怪我の予防にもつながります
ただ、オフロードパスのようなボールキャリアーがタックルされながらパスをするプレイは、タックラーは直立位でのタックルで防ぐことが多く、この辺りは安全面とパフォーマンスが噛み合わない可能性もこの文献では指摘しています
参照文献
その他
→リハビリやトレーニング、脳振盪リハビリも実施しています
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