はじめに
脳振盪の治療法やリハビリ方法は確立されたものはまだなく、現在さまざまな方法が研究されています
その中の1つに音楽を用いる治療方法があります
音楽がストレスを軽減させる効果があるのは多くの人が実体験から感じたり、学術的な研究でも認められています
脳振盪を受傷した場合、生活中の脳への過剰なストレスは脳の回復を遅らせ、脳振盪の症状の悪化や遅延、それゆえにスポーツや社会復帰を遅らせる可能性があります(脳への過剰なストレスは脳振盪を受傷していないくても良いことではないですが)
それゆえにその様な過剰なストレスを音楽療法で低減する試みなどが現在研究されています
実際に海外の脳振盪クリニックでは脳振盪リハビリテーションの合間にヘッドフォンで「バイノーラル・ビート」と呼ばれる低い周波数の音を聴いてもらうこともしているそうです(参照資料1)
今回の記事では他にも脳振盪と音楽療法に関して検索した出てきた文献を簡潔にまとめたいと思います
脳振盪と音楽療法
1 脳振盪を受傷したトップアスリートでも音楽を聞くことでストレスレベルは下がるか?
この文献では音楽を聴くことが脳振盪受傷者でもそのストレスレベルを下げるのに有効かを探っています
被験者はトップアスリート84名で、それらを4つのグループに分けます
①脳振盪なしx音楽なし
②脳振盪なしx音楽あり
③脳振盪ありx音楽なし
④脳振盪ありx音楽あり
これら4グループに精神的ストレスがかかるようなテストを行います(ここではストレスを与えるために就職活動の模擬面接やスピーチが行われました)
このテストの後に「音楽あり」グループはヘッドフォンで既定された音楽(モーツァルト)を10分間聴き、「音楽なし」グループでは無音で10分間待っていました
結果は4つのグループ全てでストレステストの後にストレスレベルは下がりました
ストレスレベルの下がり具合では、「④脳振盪ありx音楽あり」グループの方が他のグループよりも下がっている様にも見えますが、統計的には大きな差は無い結果となりました
2 ピアノの練習で脳振盪からの復帰、脳機能の回復の達成
これは非常に興味深い研究です
軽度頭部外傷(mTBI)を受傷した患者11名に週2回、1回30分のピアノのレッスンを8週間受けてもらい、また毎日15分間自宅でもピアノの練習をしてもらいました
全ての患者は受傷から2年間以上経過しており、怪我によって以前の仕事も出来ていない状態でした
ですが、8週間のピアノレッスン後では前頭葉や運動野などの脳機能結合が改善し、脳機能のテストでも改善が見られました
また7名中6名は以前の仕事への復帰も果たしました
まとめ
現在の脳振盪の治療やリハビリは運動療法や内服薬、バランス機能改善の為の前庭療法、心理サポート、栄養療法などがあります
音楽療法はまだメインの治療方法ではありませんが、前述のピアノレッスンなどは非常にその効果が期待出来るのではないかと思います
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