はじめに
こんにちわ、爪川です
今回の記事ではカナダで行われた研究をご紹介したいと思います
この研究ではカナダ在住の理学療法士・作業療法士・アスレティックセラピストを対象に、子供の脳振盪受傷者に対してどのような治療・リハビリを選択するかを回答してもらうアンケートを実施しました
脳振盪の治療やリハビリはまだわからないことが多く、「この場合はこれ!」「その場合はこう!」というようにはっきりとは行かずに、症状や状態を見ながら「おそらくこれがいいだろう」といような手探りの中で進められています
ある程度の脳振盪治療・リハビリのスタンダードはありますが、そのスタンダードに沿って選手や患者が回復する時もあればそうでない時もあります
ですので、このような研究を参考に他の国ではどのように脳振盪治療・リハビリを行なっているのかを知る事が出来るのは参考になるかと思います
子供の脳振盪リハビリで何をするか? カナダでの調査より
研究の目的
①子供の脳振盪治療・リハビリを行う際はどのような方法をとるか?
②子供の脳振盪治療・リハビリで有酸素運動を選択する臨床家はどの程度いるか?
実験内容
・カナダの理学療法士、作業療法士、アスレティックセラピスト(日本で言うアスレティックトレーナーに近い職業)を対象にウェブ上でアンケートを実施
・アンケートは合計で44問
・脳振盪の症状がある子供のシナリオを2つ用意
・そのシナリオでどのような治療・リハビリの選択をするかを解答してもらう
・治療とリハビリの選択肢はあらかじめ用意されており、複数の選択肢を同時に選ぶことが出来る
・質問の解答によって次の質問が変わるようにアンケートは設計されている
・合計555名が全ての質問に解答
・用意されたシナリオは以下の2つ
シナリオ 1
”10歳の女性サッカー選手が医師による脳振盪との診断の2週間後に来院しました。彼女はヘディングをしようとした時に、相手選手の頭部と自分の頭部をぶつけました。意識消失はありません。彼女はすぐさま競技から除外され、そのあと身体的休息を続けています。来院のきっかけは脳振盪の症状が2週間改善していないからです。
検査の結果、彼女は以下の症状がありました。頭痛1/6、疲労感4/6、悲しくなる3/6、心配になる・不安になる3/6(6が一番ひどい状態)。彼女は2年前に1回脳振盪の既往があります。彼女は偏頭痛、学習障害、他の精神障害の既往はありません。彼女は学業には完全に復帰しており、学校の後も症状に変化はありません。他には全般的に健康な状態です。
また、バランス障害や前庭・動眼機能の低下はありません。頸部にも異常はありません。SCAT3では認知機能の障害もありませんでした”
シナリオ 2
”8歳の男性ホッケー選手が医師による脳振盪との診断の4週間後に来院しました。彼はホッケーの第3ピリオドで氷上に頭を打ち付けて受傷しました。意識消失はありません。彼はその後もプレイを続けてから身体的休息を行いました。来院のきっかけは2週間の間、症状の改善がみられないからです。
検査の結果、彼は以下の症状がありました。頭痛2/6、吐き気2/6、疲労感1/6。彼は脳振盪、偏頭痛、学習障害、他の精神障害の既往はありません。彼は学業に完全に復帰していますが、学校の後では疲労感が3/6に悪化します。他には全般的に健康な状態です。
また、バランス障害や前庭・動眼機能の低下はありません。頸部にも異常はありません。SCAT3では認知機能の障害もありませんでした”
結果
研究目的①「子供の脳振盪治療・リハビリを行う際はどのような方法をとるか?」に対しての結果
シナリオ1の子供に対して治療・リハビリ(50%以上の回答者が選んだ選択肢)
① Education(教育):85%
② Sleep Recommendations(睡眠教育、推奨):65%
③ Goal Setting(目標設定):58%
④ Energy Management(エネルギー管理):55%
シナリオ2の子供に対して治療・リハビリ(50%以上の回答者が選んだ選択肢)
① Education(教育):80%
② Energy Management(エネルギー管理):62%
③ Sleep Recommendations(睡眠教育、推奨):58%
④ Goal Setting(目標設定):54%
※①Education(教育)の内容は主に以下の7つの事に関して患者(この場合では子供)に伝えます。⑴脳振盪に関しての情報、⑵回復について、⑶脳振盪のマネジメント、⑷栄養・水分補給・睡眠について、⑸安心・不安の解消、⑹目標設定、⑺親や保護者への教育
以下の写真は選択肢をまとめた表です
研究目的②「子供の脳振盪治療・リハビリで有酸素運動を選択する臨床家はどの程度いるか?」
シナリオ1の子供の場合:36%
シナリオ2の子供の場合:35%
個人的な感想
この研究はシナリオに回答してもらう形式なので現実とは多少違う可能性もありますが、カナダでは脳振盪の症状がある患者(この場合は子供)に対してどのような治療・リハビリの選択をするかという事がわかり、非常に勉強になる内容となりました
個人的には2つのシナリオともに有酸素運動を行うと回答した方が30%以上いたのに対し、”manual therapy”(徒手療法)を行うという方も同じぐらいの割合でいたのが興味深かったです
また、今回回答があった選択肢にはありませんでしたが、「音楽療法」というのも治療・リハビリ方法としてはありだったのかなと思います
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