はじめに
こんにちわ、爪川です
今回の記事では「バッファロー脳振盪身体検査(診察)」という脳振盪患者の身体機能をチェックする方法にどのような項目が入っているのかを見ていきたいと思います
バッファロー脳振盪身体検査(診察)はBCPE(Buffalo Concussion Physical Examination)と略されます
BCPEは病院やクリニックの外来患者に対して使用され、それゆえ身体検査にある程度の時間を割けられたり(と言ってもBCPEは簡潔に出来るように設計されていますが)、設備が整っていることが前提になります
脳振盪評価方法として一般的なSCAT5(Sports Concussion Assessment Tool, 5th edition)は試合会場やグラウンドのサイドラインで10-15分程度で完了することが出来ますが、所用時間や設備、評価項目などからSCAT5とBCPEは性質が異なります
スポーツ現場で働くアスレティックトレーナーの場合はBCPEまでやる場合は多くないかもしれませんが、脳振盪の評価やリハビリなどを行う場合はBCPEの知識があるとその質が上がることも考えられます
バッファロー脳振盪身体検査の項目: Buffalo Concussion Physical Examination
BCPEは以下の5つの大きな項目と補助項目から構成されています
1 Orthostatic Vital Signs(体位性のバイタル測定)
2 Cranial Nerve Examination(脳神経検査)
3 Oculomotor/Ophthalmologic Examination(動眼・眼科検査)
4 Cervical Examination(頚椎検査)
5 Vestibular Examination(前庭検査)
6 Supplementary Testing(補助項目)
Orthostatic Vital Signs(体位性のバイタル測定)
バイタル(心拍数や血圧など)は自律神経によって制御されており、その自律神経は脳振盪によって影響を受ける場合が多いです
自律神経の機能低下を表す症状として例えば起立性低血圧(OH)、めまいや前庭機能の低下、体位性頻脈症候群(POTS)、安静時や運動時の心拍や血圧反応の変化があります
起立性低血圧は仰向けから立ち上がった時の血圧が上で20mmHg以上、下で10mmHg以上の減少として定義されています。ただ、人口の5-30%で起立性低血圧は起こるとも言われており、脳振盪患者の場合は血圧の変化だけでなく頭痛などの症状が発生・悪化する場合で注意する必要があります
仰向けからの起立時に心拍数の上昇(40以上の増加)と血圧の低下が起こる場合は血液量の減少を示唆し、逆に心拍数の変化がない場合は中枢に神経的な原因があると考えら得ます
また、仰向けの時にめまいや回転性めまいがある場合は末梢性前庭障害が考えられ、Dix-Halpike法や耳鏡検査の必要性を示唆します
Cranial Nerve Examination(脳神経検査)
12個ある脳神経の中から「動眼・眼科検査」でチェックしない嗅神経、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経を検査します
脳神経単独の機能低下は脳幹部分の損傷を示唆する場合もあり、より詳細な検査が必要です
Oculomotor/Ophthalmologic Examination(動眼・眼科検査)
ここでは眼底検査、追跡眼球運動(パスート)、反復急速眼球運動(サッケード)、前庭動眼反射、輻輳運動、調節機能などが含まれます
これらの機能異常は未成年の軽度頭部外傷患者の69%に見られ、追跡眼球運動や反復急速眼球運動の異常や症状の発生・増悪がある場合はリカバリーに時間がかかることが示唆されます
また輻輳運動時の近点(物が二重にならずに見える最も目に近い距離)は成人が10cm以内、子供が6cm以内が正常と判断されます
Cervical Examination(頚椎検査)
頭部外傷時に頚椎や後頭下周辺への損傷も頻繁に起き、それは頭痛やめまい、バランス機能障害に繋がります
亜急性の頸部障害は脳振盪の症状に非常に良く似ています。有酸素運動を行う際、軽度の症状の悪化があるものの最大心拍数まで有酸素運動が行える場合は頸部の問題の可能性が高いです
Vestibular Examination(前庭検査)
前庭機能障害は安静時には見つけにくく、それゆえにprovocation的(挑発的)な検査を行う必要があります
検査はBalance Error Scoring System(BESS)や修正BESSやタンデム歩行が信頼性が高いテストです
他にはタンデム歩行やタンデム立位も実施しやすい検査で、デュアルタスクでのタンデム歩行(タンデム歩行しながら計算をするなど)はより微細な前庭機能障害を見つけることが出来る場合があります
Supplementary Testing(補助項目)
上記の5つの項目以外には運動強度を測るバッファロー脳振盪トレッドミルテストやImPACTテストやKing-Devickテストなどがあります
注意
このBCPEは青年層や若年層に対して使用されることを前提としており、児童や年齢の高い成人には適切ではない場合があります
また脳振盪の評価はこのBCPE以外にも一人一人の患者の既往歴や認知機能検査などと共に併せて行われることが前提となります
まとめ
今回はバッファロー脳振盪身体検査(BCPE)の項目について見てみました
脳振盪の検査ではSCAT5やVOMSが有名ですが、BCPEにはそれらに含まれない部分もあることがわかります
脳振盪評価の際には前庭や動眼機能のチェックの他にも自律神経のチェックは非常に重要になってくるので、心拍数や血圧などのチェックは現場でのリハビリにも使えるかと思います
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
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