はじめに
こんにちわ、爪川です
前回の記事ではバッファロー脳振盪身体検査(BCPE)について書きましたが、今回の記事はその続編です(前回の記事はこちら)
BCPEでチェックする項目は大きく5つと補助項目の1つから成りますが、それらの項目でチェックしたものの中で「どの症状があると脳振盪からの回復に時間がかかるか?」を研究した論文を今回は見ていきたいと思います
バッファロー脳振盪身体検査のスコアとリカバリー期間
「脳振盪からの回復に時間がかかる」とはどれくらいの期間を指すのか?
この研究では「回復」の定義を「①安静時に症状がなく、②医師による検査で異常がなく、③運動も出来て通常の学校生活を問題なく過ごせる」としています
※運動は問題なく出来るけれども、ここでは「競技に復帰」したことを回復の定義とはしていないので注意が必要です
また、先ほどの回復を達成するまでに30日以上の日数を要する場合に「回復に時間がかかる」と定義しています
「具体的にどんな項目をチェックしたのか?」
脳振盪の遅い回復と関連があるかをチェックした項目は以下となります
1 年齢
2 性別
3 今までの脳振盪を受傷した回数
4 受傷から最初の診察までの日数
5 単発/低速での受傷(スポーツなど)
6 多数/高速での受傷(交通事故、高所からの落下など)
7 起立性低血圧
8 パスート運動(滑動性眼球運動)
9 水平の繰り返しサッケード運動(跳躍性眼球運動)
10 垂直の繰り返しサッケード運動(跳躍性眼球運動)
11 前庭動眼反射
12 輻輳近点
13 タンデム歩行
14 首の圧痛
15 首の筋緊張
16 首の可動域
結果
この研究ではチェック項目の結果やその組み合わせでポイントが加算され、そのポイントが高ければ高いほど脳振盪からの回復が遅い確率が高くなるように結果を示しました
ポイントが15点以上→ハイリスク(70%以上の確率で脳振盪からの回復に時間がかかる)
ポイントが11-14点→メディアムリスク(30-70%の確率で脳振盪からの回復に時間がかかる)
ポイントが11点以下→ローリスク(30%以下の確率で脳振盪からの回復に時間がかかる)
そして上記のチェック項目の中から、その症状の有無や組み合わせでポイントが加算されるのは以下の8つです
① 受傷から最初の診察までの日数→1日ごとに1ポイントの加算
もし受傷して次の日に診察を受ければ1ポイント、7日経過してから診察を受ければ7ポイントという様に1日を1ポイントとして数えます
15点以上だとハイリスクに分類されるので、受傷から15日以上経過している場合はその時点で脳振盪からの回復は遅くなることが見込まれます
② 多発/高速での受傷→2ポイントの加算
脳振盪を受傷したきっかけが交通事故などの多発/高速型の場合は2ポイントが加算されます
③ 今までに3回以上脳振盪を受傷している→4ポイントの加算
④ 起立性低血圧→5ポイントの加算
仰向けから立ち上がった時に症状の悪化や血圧の低下があった場合、5ポイントが加算されます
⑤ 前庭動眼反射→5ポイントの加算
前庭動眼反射をチェックした際に症状の悪化や異常所見が見られれば5ポイントが加算されます
⑥ タンデム歩行→1ポイントの加算
タンデム歩行が正常に行えない場合は1ポイントが加算されます
⑦ 起立性低血圧と前庭動眼反射の併発→4ポイントの減点
起立性低血圧と前庭動眼反射が両方とも併発している場合は4ポイントの減点となります。起立性低血圧単独で5ポイントの加算、前庭動眼反射単独で5ポイントの加算がされているので、それらが併発している場合はそれらの合計10ポイントより4ポイント減点した6ポイントの加算という計算になります
⑧ 多発/高速での受傷とタンデム歩行の併発→5ポイントの加算
多発/高速での受傷単独で2ポイント、タンデム歩行単独で1ポイント、これらの合計3ポイントにさらに5ポイント加算されて8ポイントという計算になります
ポイント計算の例
受傷から5日経過してから診察→5ポイント
スポーツでの受傷→0ポイント
今までの脳振盪回数は2回→0ポイント
起立性低血圧の症状はなし→0ポイント
前庭動眼反射は異常所見→5ポイント
タンデム歩行は異常→1ポイント
合計ポイント:5+5+1=11ポイント
11ポイント→メディアムリスク(30-70%の確率で脳振盪からの回復に時間がかかる)
まとめ
今回はバッファロー脳振盪身体検査の結果に基づいた脳振盪からのリカバリー期間についてまとめました
この身体検査は子供や未成年を対象にしたものなので成人にはそのまま当てはめることは出来ませんが、参考になる部分はあるのかと思います
特に脳振盪を受傷してから早期に医療機関を診察した方が回復が早いことがわかっており(その記事はこちら)、このBCPEの検査でもそれを示唆する結果が出ています
ですので「脳振盪かもしれないし、脳振盪じゃないかもしれない」という場合も含めて、まずは医療機関の受診(脳神経外科や頭部外傷を扱っているクリニック)から早期の治療が大事になってきます
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
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