こんにちわ、爪川です
今回の記事では先日の国際スポーツ脳振盪会議の共同声明で発表されたChiild SCAT6について見ていこうと思います(参照資料1)
Child SCAT5からChild SCAT6へ
Child SCATとはスポーツ現場などで行われる脳振盪評価ツールの子供バージョンです
以前まではChild SCAT5が使用されていましたが、この度アップデートされてChild SCAT6となりました
Child SCAT5からChild SCAT6へおおまかな変更点は以下です
- 適応年齢
- 実施タイミング
- 受傷時の対応に関する文言
- Immediate Assessment/Neuro Screenの項目の追加
- 症状の欄の赤字の追加
- 即時記憶の単語の数
- タンデムウォークの評価項目の追加
今回の記事ではこれらの変更点について見ていこうと思います
適応年齢
Child SCAT6では実施対象となる選手の年齢が変更になりました
以前のChild SCAT5では5-12歳を対象にしていたのに対して、今回のChild SCAT6は8-12歳を対象にしています
日本で言うと小学校2-3年生から6年生が対象になるイメージです
実施タイミング
前回の記事でSCAT6の実施タイミングが変更になったとお伝えしましたが、Child SCAT6も実施タイミングは変更になっています
(前回の記事はこちら↓)
Child SCAT6も実施タイミングは受傷から72時間以内が推奨されました
またChild SCAT6の使用を続けたとしても受傷後1週間までとし、それ以降は新しく作成・発表されたChild SCOAT6の使用を推奨しています
受傷時の対応に関する文言
少し細かな部分ですが、受傷時の対応に関する文言も変更になっています
脳振盪を疑うような怪我が発生した場合、以前のChild SCAT5では”should be removed from play”(競技から抜けさせるべき)と記載がありました(参照資料2)
ですが、新しいChild SCAT6では”should be immediately removed from play”(すぐに競技から抜けさせるべき)と、「すぐに」の部分が追加されました
単語1つ追加されただけですが、「脳振盪の疑いがあれば間髪入れずに競技を抜ける」ことの重要性を強調するためだと考えられます
Immediate Assessment/Neuro Screenの項目の追加
Immediate Assessment/Neuro Screenとは怪我が発生した時にフィールド内ですぐに行う評価を指します
以前のChild SCAT5ではこの評価に3つの項目が含まれていました
それらは客観的兆候、グラスゴーコーマスケール、頚椎の評価です
ですがChild SCAT6では上記の3つに加えて、“Coordination & Oculomotor Screen”が含まれました
ここでは「指鼻指試験」や「動眼機能(パスート)」のチェックを行います。またそれらのテスト中の眼球の動きに異常がないかもチェックします
症状の欄の赤字の追加
この変化もごく小さなものですが、それでも変わった意図があるかと思いましたのでここでも記載しました
Child SCAT5でもChild SCAT6でも症状に関しての質問票があります
その数は22種類ありますが、Child SCAT5ではそれら全てが黒字で書かれています
ですがChild SCAT6では“my neck hurts”(首が痛い)という部分だけ赤字になっています
これは「首の痛み」がある場合はRed Flagsと呼ばれる対応となり、すぐに病院に行くことが推奨されるためです
それゆえに「首の痛み」の部分だけ強調されているのだと思われます
即時記憶の単語の数
Child SCAT5でもChild SCAT6でも記憶力に関するテストがありますが、そこでは5つの単語もしくは10個の単語を覚えられるかをチェックしていました
ですが、Child SCAT6では5つの単語のチェックはなくなり、常に10個の単語で評価をすることになりました
タンデムウォークの評価項目の追加
タンデムウォークとは1本の線の上を歩くことを指します
基本的には3mの線の上を線からはみ出さないように1往復歩きます
以前はこのタンデムウォークが「問題なく行えるか」というのが評価基準でしたが、Child SCAT6からはタンデムウォークにかかった「時間」を計測します
さらにはタンデムウォークの難易度が高いやり方も3つ導入されました
3つのやり方のうち、2つは必須で1つはオプションなので選択制です
必須の2つのうち1つ目はタンデムウォークで前に5歩歩き、その時に線の上を歩けているか、体幹がブレていないかをチェックします。また、前に5歩歩くときは目を開けたまま行うのと、目を閉じて行う2パターンを実施します
2つ目はタンデムウォークで後ろの5歩歩きます。これも上記と同様に線の上を歩けているか、体幹がブレていないかをチェックし、且つ目を開けた状態・閉じた状態でも行います
最後に選択制のやり方ですが、これは通常のタンデムウォークを行いつつ、引き算を行います
引き算は100から7を順々に引いていき、その数を発声します(例:100, 93, 86, 79, 72, 65,,,,)
この引き算を行いながらタンデムウォークを行い、引き算に間違いがないか、そしてタンデムウォークに要した時間を計測します
まとめ
今回のまとめです!
- Child SCAT6の主な変更点は以下の7つ
- 適応年齢:5-12歳から8-12歳へ
- 実施タイミング:受傷後72時間以内、長くても1週間以内
- 受傷時の対応に関する文言:脳振盪の疑いがあれば「すぐ」に競技を抜ける
- Immediate Assessment/Neuro Screenの項目の追加:動眼機能などの評価の追加
- 症状の欄の赤字の追加:首の痛みに関する赤字強調
- 即時記憶の単語の数:5単語の廃止
- タンデムウォークの評価項目の追加:難易度の高い評価方法の追加
参照資料
1 https://bjsm.bmj.com/content/57/11/636
2 https://bjsm.bmj.com/content/bjsports/early/2017/04/26/bjsports-2017-097492childscat5.full.pdf
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