はじめに
今回の記事では以下の写真の文献をもとに、脳震盪後症候群の患者に対して行うべき臨床検査をご紹介したいと思います
ただ、この臨床検査はあくまで「絶体にやるべきこと」であったり、「これ以外はいらない」ということではないので、参考程度のご覧になってください
脳振盪後症候群とは
脳振盪後症候群(のうしんとうごしょうこうぐん)とは、脳振盪を受傷した患者は成人であればおよそ2週間、子供であればおよ4週間で正常な状態に回復しますが、その期間以上に症状が長引いているような状態を指します
症状は頭痛やめまいと言った症状から、寝付けない、集中できない、人との距離感がわからない、といった症状まで様々です
実際に私のところにご相談に来て頂いた方では、脳振盪受傷から3年や4年経ってもまだ症状が残っているというような方も見られます
この脳振盪後症候群に関しては、あるアメリカ人女性の体験記を昨日の記事で投稿していますので、そちらもご覧ください
脳振盪後症候群患者の為の5つの臨床検査
脳振盪後症候群では様々な症状がありますので、その臨床検査(身体のチェック)は多岐に渡ります
今回参考にする文献ではこの症状を主に5つの部類に分けてチェックしています
1 内耳神経の機能チェック
内耳神経(ないじしんけい)とは耳の中にある神経です
内耳神経は2つの神経が合わさった名前で、1つは蝸牛神経(かぎゅうしんけい)、もう1つは前庭神経(ぜんていしんけい)と呼ばれます
この2つの神経にはそれぞれ役割があり、蝸牛神経は”聞く”機能を、前庭神経は”身体を水平に保つ”機能があります
身体を水平に保つ機能とは、例えば室内に入ったときに若干床が傾いていたら「傾いている」とわかると思います
これは身体を水平に保つ機能である前庭神経のおかげです
蝸牛神経のテストとしてはFinger Rubと呼ばれる、耳元で指を擦り合わせてその音を聞くテストがあります
些細な音ですが左右の耳で違いがあれば、片方の蝸牛神経へのダメージを示唆し、その場合はダメージが示唆されている側の前庭神経の機能も低下している場合が多いです
また眼振(がんしん)と呼ばれる目がガクガクと震える状態も蝸牛神経へのダメージが示唆される側によく現れます
ロンベルグ試験というバランス能力をチェックするテストでは、首もしくは前庭神経の機能が低下している方に身体が揺れることがよくあります
また、Dix-Hall Pike maneuverと呼ばれる良性発作性頭位めまい症のチェックや治療の際に行われる頭の動かし方を機能が低下している側に行うと、めまいや吐き気、時には眼振が現れます
2 自律神経の機能チェック
自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成り立っています
瞳孔に左右差がある場合、瞳孔が小さい側の交感神経の機能低下を示唆しています
他に交感神経の機能低下を示唆するものは、冷たく汗ばんでいる手足、拡張した瞳孔、起立性低血圧(寝ている状態から起き上がった時の一定以上の血圧の低下)、頻脈(ひんみゃく:安静時に1分間の心拍数が100以上になること、通常は60-80程度)
3 脳幹と皮質機能チェック
脳幹(のうかん)とは脳と脊髄(せきずい)を繋いでいる部分です
脳幹には目の動きをコントロールする神経、呼吸リズムや歩行リズムをコントロールする機能など重要な神経が数多くあります
皮質とは脳の神経細胞がある部分です
皮質が発達したおかげで人間は理性や論理的思考、適切な判断力を得ることが出来ました
急速眼球運動(サッケード)や追従眼球動作(パスート)と言った目の動きの際に起こる眼振や、寄り目をした際に片方の眼球が中央に寄らないなどは脳幹機能の低下を示唆しています
4 首の機能チェック
以下の状態が見られた場合、首の機能低下も発生していることを示唆しています
首の筋肉の圧痛やスパズム(筋肉の緊張が高くなっていること)、後頭神経痛(こうとうしんけいつう:後頭部の神経が原因の痛み)、首の可動性の低下、スパーリングテスト(首の神経の状態をチェックするテスト)の陽性反応、異常な腱反射
5 認知機能のチェック
Montreal Cognitive Neurologic Assessment (MOCA) Testing(モントリオール認知神経機能評価ツール)を使用することにより、認知・視空間認知・判断・注意・言語機能のチェックが出来ます
以上、今回参考にした文献にある5つのチェック項目でした
また、5つの項目には入っていませんが、脳振盪後症候群患者の症状の推移をチェックするツールとしてRivermead Postconcussion Syndrome Questionnaireを紹介しています(下の写真)
まとめ
今回は文献を参考に、脳振盪後症候群の患者に対してチェックすべき項目をご紹介しました
それらは
1 内耳神経の機能
2 自律神経の機能
3 脳幹と皮質の機能
4 首の機能
5 認知機能
これら5つです
また脳振盪の症状の推移を見る為のRivermead Post-Concussion Symptoms Questionnaireも掲載されています
脳振盪では急性期でも慢性期でも様々な症状が現れますので、関係している機能を適切にチェックし、機能低下している部分に対して根気強くリハビリなどを行なっていくことが大切です
「スポーツ中の脳しんとうで悩む選手を減らしたい」
脳振盪でお困りの選手やそのご家族の方はいつでもコメントやお問い合わせからご相談ください
管理人が代表をしている東京都文京区にあるパーソナルジム「Calantスポーツリハビリ&パフォーマンス」でも脳振盪リハビリを行なっておりますので、そちらも合わせてご参考ください
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