はじめに
こんにちわ、爪川です
今回は記事は「脳振盪受傷後1ヶ月以内の未成年アスリートに対して、有酸素運動とダイナミック運動をアセスメントとして実施」した論文を見ていきたいと思います
アセスメントとしての有酸素運動とダイナミック運動
概要
・脳振盪受傷後1ヶ月以内の未成年アスリートを対象に、有酸素運動とダイナミック運動を実施
・被験者の総数は65名
・未成年アスリートの年齢は平均約15歳
・脳振盪受傷後、概ね14〜17日後にアセスメント実施
・有酸素運動はステーショナリーバイク、トレッドミル、クロストレーナー(エリプティカル)のいずれかを実施
・ダイナミック運動はメディスンボールスロー、そして問題がなければアジリティードリルも実施
・アセスメントの順番は有酸素運動→ダイナミック運動の順
・安静時に脳振盪の症状があってもアセスメントは実施
・アセスメントによって脳振盪の症状の悪化もしくは誘発が起きる具合によって以下の3つのカテゴリーに被験者を分ける
グループA:有酸素運動で脳振盪の症状の悪化もしくは誘発
グループB:ダイナミック運動で脳振盪の症状の悪化もしくは誘発、有酸素運動では問題なし
グループC:有酸素運動とダイナミック運動のどちらでも脳振盪の症状の悪化や誘発なし
・アセスメント前の被験者の状態(有症状、無症状)、アセスメント後の状態、それぞれのグループでスポーツ復帰までの日数などを調査
・また、頭痛、めまい、VOMS(Vestibular/Ocular Motor Screening)の結果やアセスメント前後での変化も調査
結果
・65名中、アセスメント直前の安静時に症状が有ったのは19名(約30%)、無かったのは46名(約70%)
・アセスメント後のカテゴリー分けの結果(グループA:有酸素でNG、グループB:ダイナミックでNG、グループC:両方OK)
安静時に症状有り19名
→グループA:9名(47.4%)
→グループB:8名(42.1%)
→グループC:2名(10.5%)
安静時に症状無し46名
→グループA:11名(29.3%)
→グループB:17名(37.0%)
→グループC:18名(39.1%)
・カテゴリー別の競技復帰までの日数
安静時に症状有り19名
→グループA:72.3日±73.1日
→グループB:45.4日±16.7日
→グループC:40.5日±6.4日
安静時に症状無し46名
→グループA:39.9日±24.1日
→グループB:32.1日±17.1日
→グループC:22.3日±13.2日
・アセスメント前後での頭痛の症状の変化
安静時に頭痛有り19名
→アセスメントで頭痛悪化:8名(42.1%)
→→有酸素運動で悪化:5名
→→ダイナミック運動で悪化:3名
安静時に頭痛無し46名
→アセスメントで頭痛発症:14名(30.4%)
→→有酸素運動で発症:9名
→→ダイナミック運動で発症:6名
※症状のカウント方法によって総数に違いあり
・アセスメント前後でのめまいの症状の変化
安静時にめまい有り4名
→アセスメントでめまい悪化:3名(75.0%)
→→有酸素運動で悪化:2名
→→ダイナミック運動で悪化:1名
安静時にめまい無し61名
→アセスメントでめまい発症:30名(49.2%)
→→有酸素運動で発症:7名
→→ダイナミック運動で発症:28名
※症状のカウント方法によって総数に違いあり
・アセスメント前後でのVOMSとめまいの症状の変化
安静時にVOMS異常有り26名
→アセスメントでめまい悪化:18名(69.2%)
→→有酸素運動で悪化:5名
→→ダイナミック運動で悪化:14名
※症状のカウント方法によって総数に違いあり
安静時にVOMS異常無し39名
→アセスメントでめまい悪化:15名(38.5%)
→→有酸素運動で悪化:4名
→→ダイナミック運動で悪化:15名
※症状のカウント方法によって総数に違いあり
まとめ
今回は「脳振盪受傷後1ヶ月以内の未成年アスリートに対して、有酸素運動とダイナミック運動をアセスメントとして実施」した論文を見ていきました
上述のように安静時に脳振盪の症状が有れば約50%が有酸素運動で、約40%がダイナミック運動で症状が悪化しますが、約10%はどちらの運動も症状の悪化なく行えました
これを脳振盪のリハビリの観点から考えると、安静時に症状が有ったとしても運動アセスメントを実施、有酸素運動で症状が悪化すれば有酸素運動のリハビリを、ダイナミック運動で症状が悪化すればダイナミック運動のリハビリを、どちらも大丈夫で有れば安静時の症状に繋がる他の原因を探るという選択肢も取れるかと思います
逆に安静時に脳振盪の症状が無くても、約30%が有酸素運動で、約40%がダイナミック運動で症状が誘発されます
この事から安静時に症状が消失し有酸素運動が十分に行えたとしても、少しずつ競技に戻る前にはしっかりとしたダイナミック運動のアセスメントの必要性を示唆しています(経験的にノンコンタクトのみなどで競技に戻ってから症状が再発すると選手のモチベーションが大きく下がる傾向にあるので、ノンコンタクトでも練習に戻る前には出来る限り万全の体勢で戻すのが有効かと思います)
また、論文内にも記載がありますが、「めまい」の症状は安静時には消失していても運動で約半数が症状を発症しています。特にダイナミック運動でめまいの発症が多いことからも、この要素をリハビリやアセスメント段階で取り入れることの必要性を強く示唆しています
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本日は以上となります、ご精読ありがとうございました
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