こんにちわ、爪川です
脳振盪を受傷すると脳振盪から回復してスポーツ復帰した後に怪我のリスクが上がるのではないかと議論されています
今まではその議論は下肢の怪我の調査が多かったのですが、今回見ていく研究では上肢の怪我に関してその関係を探っています
因みに下半身の怪我に関する記事は以前に書いていますので、そちらもご覧ください
脳振盪からスポーツ復帰後の怪我のリスク:上肢編
研究概要
- 対象者はアメリカの陸軍士官学校(Military Academy)に通う17-27歳の学生
- 対象人数は5,660名
- 対象者全員が部活動、Intramural、クラブ活動などに参加
- 陸軍士官学校でも部活動は他の大学と同じように存在する
- Intramuralとは校外試合などをしない学内だけの活動、クラブ活動は日本の大学のサークル活動に近いもの
- 研究期間は2015-2018年
- 上記期間内に脳振盪を受傷した学生のスポーツ復帰後1年以内の上肢の怪我発生数を調査
- 脳振盪受傷者と性別と競技レベルがマッチした比較群を抽出し、その群の上肢の怪我の発生数を調査(このグループは入学後に脳振盪の受傷歴はなし)
- 上肢の怪我の発生数の他にも、「競技レベル」、「脳振盪の既往歴」、「Brief Symptom Inventory-18のスコア(anxiety, depression, somatizationの3種)」、「上肢の怪我の既往歴」も調査
研究結果
- 研究期間中に389件の脳振盪が発生
- この中から316件の脳振盪に関して、受傷者のスポーツ復帰後の上肢の怪我の発生数を調査
- 316名の受傷者のうち、61名(19.3%)が1年以内に上肢の怪我を受傷
- 比較群として抽出した脳振盪非受傷者316名では、29名(9.2%)が1年以内に上肢の怪我を受傷
- 上記の数字に関して「競技レベル」、「脳振盪の既往歴」、「Brief Symptom Inventory-18のスコア(somatization)」、「上肢の怪我の既往歴」の多数量解析を行った結果、脳振盪受傷者の方が非受傷者よりもスポーツ復帰後に上肢の怪我をする確率は1.84倍高いと算出
下肢の怪我のリスクとの比較
今回の研究で、脳振盪を受傷するとスポーツ復帰後1年以内の上肢の怪我の発生リスクは脳振盪非受傷者と比較して1.84倍高いと報告されました
下肢の怪我のリスクに関してもスポーツ復帰後1年以内では1.64-3.16倍と報告されており、その数値は近いものがあります(これに関する詳細は以下の記事をご覧ください)
まとめ
今回のまとめです!
- 17−27歳を対象にしたこの研究では、脳振盪からスポーツ復帰後1年以内に上肢の怪我のリスクが高まる可能性を示唆
- 脳振盪非受傷者と比較し、そのリスクは1.84倍と算出
- この数値は下肢に関する同様の研究結果と類似する
参照資料
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