※この記事は以前blogに掲載したものです
脳振盪は頭部外傷(頭の怪我)の1つです
ただし、筋肉の肉離れや骨の骨折などと違い、レントゲンやCT、MRI画像では異常が確認できません
もちろん、「画像検査で異常が確認できない」=「問題ない」というわけではなく、頭痛や吐き気、めまいなど様々な症状に悩まされることがあります
「画像検査で異常が確認出来ない」というのは非常にやっかいで、その理由の1つがどの程度の期間で回復するかどうかの目安がわからないことです
例えば肉離れであれば、どの程度筋肉から出血があるか、どの程度筋肉の繊維が損傷しているかが画像検査でわかりますので、それを基に回復にはどの程度の時間がかかるかが概ねわかります
脳振盪は今までの患者の回復具合から統計的に成人であれば約2週間、子供であれば約4週間でほとんどの患者が回復するとわかってはいますが、回復期間がどの程度になるかという客観的な指標は今のところありません
ただ、最近ではMRIの撮影方法の1つであるDiffusion Weighted Imaging (DWI)という方法を用い、脳の白質(はくしつ)の損傷具合を見ることによって脳振盪を受傷しているのか、損傷具合と脳振盪からの回復具合と関係があるのではないかと考えられています
(以前にnoteでこのDWIに関しての論文をまとめたので、そちらもご覧ください)
今回ご紹介する文献は子供の脳振盪からの回復期間と白質へのダメージ具合に関係があるかを探っています
研究方法
・被験者:救急救命に運ばれ、脳振盪と診断された未成年の子供
・受傷から2週間後に残存する症状などを基に被験者をNormal GroupとDelayed Recovery Groupに分け、全員の画像検査を実施
結果
・被験者の合計は43名(平均年齢13歳)
・受傷から2週間後の振り分けではNormal Groupに26名、Delayed Recovery Groupに17名
・2つのグループ間ではDWIの差に統計的な有意差はなし
結論
・脳の白質の損傷具合と子供の脳振盪からの回復具合に相関は見られなかった
まとめ
非常にシンプルだったので読みやすかった論文でした
脳振盪後に脳の白質の状態をチェックするのは、その有効性が他の研究でも言及されているので、今後これに関しての研究が増えてくるのかなと思います
ただ、今回の研究では脳振盪受傷後から2週間後のみに画像検査を実施したので、受傷後1ヶ月や受傷後3ヶ月での撮影だったら違う結果が出ていたかもしれません
また、被験者が最終的にどの程度の期間が回復にかかったのかの明記もなかったので、その辺りも知れたらよかったなと思います
今回も最後までお読み頂きましてありがとうございました
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