はじめに
前回、前々回と脳振盪の国際会議で発表される”Consensus Statement”と言われる論文について、第1回目の国際会議から直近の第5回目までのものを比較してきました
今回のブログ記事はそれらの論文の比較シリーズの最後として、この論文の執筆者の方々の変遷を見ていきたいと思います
変遷を見ると言っても一人一人の執筆者の方々を詳しく見るというわけではなく、執筆者の人数の変遷やどこの国の方が多いのか等、おおまかな特徴を見ていきたいと思います
第1回会議(2001年)
執筆者の人数
10名
国別執筆者
アメリカ3名、スイス2名、カナダ2名、ドイツ1名、オーストラリア1名 国際アイスホッケー連盟所属1名
特徴
第1回目の脳振盪の国際会議は国際オリンピック委員会(IOC)、国際アイスホッケー連盟(IIHF)、国際サッカー連盟(FIFA)が主催しました。それらの理由もあり、アイスホッケーやサッカーが盛んな国(アメリカやカナダ)の研究者、FIFAの本部があるスイスの研究者が多くなっているかと思います。脳振盪の段階的競技復帰プロトコルを見てもサッカーやアイスホッケーについては記載があるので、その特色が出ているのがわかります。
第2回会議(2004年)
執筆者の人数
10名(第1回目と全て同一人物)
国別執筆者
アメリカ3名、スイス2名、カナダ2名、ドイツ1名、オーストラリア1名、国際アイスホッケー連盟所属1名
特徴
第2回目の論文の著者の方々は全て第1回目の時と同一人物でした。所属先が変更になった方もおられましたが、国境を越えての変更はないので国別執筆者も変わりはありませんでした
第3回会議(2008年)
執筆者の人数
7名(ただしパネリストとして執筆者の他に計16名の方が参加)
国別執筆者
カナダ3名、スイス1名、アメリカ1名、アイルランド1名、オーストラリア1名
特徴
執筆者の人数は第1回や第2回の論文よりも減りましたが、パネリストとして16名の方が参加しています。その面ではスポーツ中の脳振盪に関しての国際会議が大きくなっていると感じます。また、執筆者のうちの1名はアイルランドに本部がある国際ラグビー連盟の方で、他のパネリストの方も多様なスポーツや研究のバックグラウンドがある方がおり、これまでのサッカーやアイスホッケーを中心としてたものよりも他の多くのスポーツ団体も参加してきている印象です
第4回会議(2012年)
執筆者の人数
28名
執筆者の方々の所属機関がある国
第4回からは執筆者の数がかなり多くなり1名の執筆者が色んな国の機関に所属している場合もあるので、国別執筆者数の比較をやめて執筆者の方々の所属機関がどの国にあるのかだけ書き上げていこうと思います
執筆者の方々の所属機関がある国:アメリカ、カナダ、スイス、オーストラリア、ノルウェー、アイルランド、イギリス
特徴
第3回と比較すると第4回の論文では執筆者の人数が大幅に増えました。ただ、第3回ではパネリストとして執筆者(7名)の他に16名の方がいらしたので、その合計(23名)と比較すると5名の増加となります
執筆者の方々は上記の7カ国の方が多いのですが、特にアメリカ・カナダ・オーストラリアが多い印象です。また、アメリカではアメリカンフットボールのプロリーグ(NFL)の方も第4回からは執筆者として参加しています(第3回ではパネリストの中に名前がありましたが、執筆者ではありませんでした)
アメリカンフットボールもアイスホッケーやラグビーと同じような選手同士の「衝突」が競技の中に含まれるスポーツです。ですので脳振盪の発生率も高く、NFL独自の脳振盪のガイドラインや研究も進んでいます
第5回会議(2016年)
執筆者の人数
36名
執筆者の方々の所属機関がある国
アメリカ、カナダ、スイス、オーストラリア、ノルウェー、アイルランド、イギリス、日本、南アフリカ、オランダ
特徴
第5回では執筆者の人数が今までで最多の36名となりました。また、執筆者の方々の所属機関がある国も多様になり、第4回と比較すると新たに「日本」「南アフリカ」「オランダ」が加わりました。
上記の変化に加えて所属機関の種類も多様になり、以前は〇〇大学病院などの大きな研究機関が多かった印象ですが、今回は〇〇脳振盪センターや□□クリニックなどのような大学病院などとは違った機関も多くなっています
まとめ
今回は前2回のブログ記事のスピンオフ的な要素が強かったですが、国際学会の執筆者の方々の変遷を見てみました
最初の国際学会はIOC、FIFA、国際アイスホッケー連盟が主催したこともあってそれらのスポーツ関係者が中心だった印象ですが、直近の第5回ではさまざまなスポーツや研究機関が参加しています
個人的には第5回の執筆者の方の所属機関の中で”Swiss Concussion Center”と記載があり、詳細はわかりませんがスイスでは脳振盪専門の医療センターがあるのかなというちょっとした驚きがありました。ただ、アメリカやカナダもこのような脳振盪専門の医療センター・クリニックは時々見かけるので、海外の脳振盪ケアの潮流を感じました
今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました
参照資料
McCrory P, Meeuwisse W, Dvorak J, et alConsensus statement on concussion in sport—the 5th international conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016British Journal of Sports Medicine 2017;51:838-847.
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