※この記事は以前blogに掲載したものです
脳震盪というのは脳の怪我の1つです
大きな括りでは頭部外傷と呼ばれ、その中では「軽度」に分類されます
ただし「軽度」であってもその症状は強かったり長引くものもあります
脳震盪は頭部への衝撃によって起こる場合もあれば、胸や身体の他の部位の衝撃が脳に伝わって起きる場合もあります
特にスポーツの中で選手同士の接触が多いもの(ラグビー、アメフト、サッカー、アイスホッケー、バスケット、柔道など)は脳震盪が起こるリスクも高くなります
また、脳震盪や脳震盪の症状が起こらない程度の頭部への衝撃(例えばサッカーのヘディング)は年齢を重ねるにつれて脳神経の変性や疾患などに繋がるのではないかとの危惧もされています
それらの可能性もあって先日も少年少女へのヘディング指導について日本サッカー協会から新たな指針が発表されていました(日本サッカー協会の記事はこちら)
まだまだ不明点は多い脳震盪ですが、もしそれを予防できる術があるのであれば積極的に行われるべきです
今回ご紹介する文献は、スポーツ中の脳震盪予防の為のトレーニングやエクササイズに関してまとめられています
この文献はシステマティックレビューと言われる種類で、非常に多くの研究を精査してこの論文の目的と合致する研究を比較してまとめたものとなります(システマティックレビューに関してのウィキペディア)
この文献では1414の研究の中から関連のある11の論文を精査しています
ちなみにこのブログ記事の題名の「スポーツ中の脳震盪:首を鍛えれば予防できる!?」は、脳震盪予防の為のトレーニングとして首の筋力強化の研究が多い為です
脳震盪は頭蓋骨の中で脳が揺れることによって起こると考えると(単純化しすぎた表現ですが)、脳が揺れないように、もしくはその揺れを低下させる為に首の筋力を鍛えればいいのではないか?
確かにそう考えられなくもないかもしれません
このシステマティックレビューでも首の筋力強化については見解が述べられています
首の筋力強化以外では、首の周径囲(サイズ)、首の硬度、特定のエクササイズプログラムについてもまとめられています(首の硬度とは「衝撃や振動に対してどの程度素早く首の筋肉などが反応できるか」を示したものです)
結論から言ってしまうと、首の筋力、首の周径囲、首の硬度、特定の障害予防プログラムの実施、これら全てでスポーツ中の脳震盪を予防可能と結論づけられるエビデンスはありませんでした
この中では首の筋力についてが一番多く研究がされていますが、ある論文では脳震盪予防の効果があったと報告され、違う論文では予防効果なしとの報告があります
もちろんそれぞれの研究で実験方法や対象となるスポーツなども異なる為に一概には言えないのですが、「首の筋力強化などでスポーツ中の脳震盪が予防できるのか?」という問いがあれば
「現時点では統一された見解は出ていない」
というのが答えになると思います
ただし特定の障害予防プログラムを実施して脳震盪の予防効果があったと報告した研究が2つありましたが、そのどちらも障害予防プログラムの詳細な内容については書かれていないので、実際のところどのようなものだったのかは不明です(その文献はこちら1、2)
では、「研究ではっきりとした見解が出ていないなら、首の筋力強化などの予防措置はやる意味はないのか?」と聞かれたとすると
「そんなことはない」と答えると思います
例えば「脳震盪予防の為に首の筋力強化」を行えば、脳震盪自体の啓蒙活動にもなります
まだまだアスリートやコーチでも脳震盪が何かというのは詳しく知らずにリスクが高い選択をしてしまう時があります
そのようなリスクを減らす為にも「脳震盪を減らす」という趣旨で行動をする事は、例え研究レベルでは脳震盪の予防効果があるかどうかは不明でも、周りの人は脳震盪という事を知るきっかけとなります
ですので、「エビデンスがない→やる意味がない」という訳ではなく、考え方や実施の仕方次第では非常に効果が高いかもしれません
最後までお読みただきましてありがとうございました
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