はじめに
脳振盪は頭痛やめまいといった症状を引き起こしますが、他にも様々な症状を引き起こします
それらは例えば認知機能の低下、集中力の低下、注意力の低下、音や光に敏感になる、教室や駅など大勢の人や物が一斉に移動する環境での症状の悪化、遠近感の低下などです
学生がスポーツ中に脳振盪を受傷した場合、もしこれらの症状があるなかで学校の授業に復帰した場合、症状の悪化が起きる可能性があります
というのも、学校では大勢のクラスメートが教室という比較的小さな部屋(人口密度的に)で動きまわります
また、授業中は静かだったとしても休み時間では賑やかになって、音が以上にうるさく感じる場合も多くあります
認知機能の低下が起きている場合は、数学や読み書きなどでも症状の悪化が起きる時もあります
それゆえ、学生がスポーツ中に脳振盪を起こした場合、徐々に学業に復帰していくように取り計らう必要があります
このような段階的な学業復帰の取り組みを英語では“Return to School”と呼ばれます
段階的な学業への復帰に関しては簡潔に別記事でまとめていますので、そちらをご覧ください
今回は最近発表された以下の論文から、このReturn to School、「脳振盪からの学業復帰」を行う際に考慮するべき6つの要素をご紹介します
脳振盪から学業復帰する為に考慮すべき6つの要素
1 症状の数と強さ
スポーツ中の脳振盪が起きた場合は様々な症状が出ます
スポーツ現場での脳振盪評価ツールとして最も使われているSCAT5(Sports Concussion Assessment Tools 5th edition)では、チェックする症状の数は22個あります
また、SCAT5ではその22個の症状の強さを0-6のスコアで評価します
0が全く症状がない状態、6が最もひどい状態です
スポーツ中の脳振盪後に起きる症状の数が多く、さらにその症状の強さが強いほど、学校を休む日数が長くなり学業復帰に要する期間も長くなります
2 症状の種類
脳振盪の症状の種類によっても学業復帰に影響を与えるものがあります。それらは、頭痛、視覚障害、記憶障害、集中力の低下、認知機能低下、そして前庭障害です
3 症状の長さ
これは想像はしやすいですが、症状が長引けば長引くほど学業復帰に支障が出やすくなります
4 年齢・学年
高校生程度の年代の方がそれより若い学年よりも、症状の数が多く、症状の強さも上がり、学業復帰に時間がかかることがわかっています
また、その年齢群の方が脳振盪で学校を休むことに対する学業成績への影響を危惧する傾向があります
5 科目
学生が受ける科目によっても脳振盪の症状が出やすいものがあります
脳振盪後の学生が最も難しさを覚えるのが数学(算数)です
その他では読み書き・言語(国語)、芸術、科学、社会が続きます
6 脳振盪後の休養
脳振盪を受傷した直後に休養を取った学生は、休養を取らなかった学生と比較してより早期に学業復帰が果たせています
脳振盪直後は脳への負荷となる活動(学業も含む)は症状を悪化させる可能性が高いです
また、スポーツ中の脳振盪が起きてからも競技を継続した学生は、すぐに競技をストップした学生よりも回復に2倍以上時間がかかると研究では示されています
終わりに
スポーツ中の脳振盪が起きた選手は診断やリハビリを経て、まずは学業を問題なく行えるように復帰し、その後にスポーツ復帰を目指していくことが推奨されています
今回はその学業復帰に際して考慮すべき6つの要素についてご紹介しました
これらの要素の有無を考慮することで、どの程度の期間が学業復帰までにかかるのかをある程度見当をつけたり、学業復帰に長い期間が必要そうであればあらかじめ学生にその事を伝えておくのはコミニュケーションや信頼関係などを構築する上で必要かもしれません
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
参照文献
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