こんにちわ、爪川です
今回の記事では脳の中の視床の機能状態と慢性的な脳振盪症状の関係についての研究を見ていこうと思います
視床と慢性的な脳振盪症状の関係
視床とは?
視床とは脳のちょうど中央に位置する部分です
視床はさまざまな役割を担っています
例えば嗅覚以外の感覚情報は常に視床を通って大脳に向かいますし、運動のスムーズさにつながる様な共同運動にも関わっています(参照資料2)
視床と軽度頭部外傷の関係に関しては、視床の体積低下と慢性期の症状の強さや脳血流の低下などの関係を示唆する研究結果も出ていきます(参照資料1)
研究概要
この研究では軽度頭部外傷を受傷した被験者を対象に、急性期に視床の状態をMRIにて検査し、また受傷から6ヶ月後の症状の検査も行い、急性期の視床の状態と6ヶ月後の症状に関係があるか等を調べています
- 被験者
- 18-70歳の108名(男性63.9%)
- 受傷起点は交通事故、転倒など
- 年齢は18-35歳が26.9%、36-55歳が46.2%、55-70歳が26.9%
- 脳振盪や神経精神疾患の既往なし
- 軽度頭部外傷受傷時のグラスゴーコーマスケール(GCS)が13-15
- 急性時のCTでの異常なし
- 視床の検査
- 視床の体積やfunctional connectivityはT1-MRIとresting state functional MRIにて撮影
- MRIは受傷から平均13.74日後に撮影
- 左右の視床と、左右それぞれにある7つの視床核を検査(合計16個の対象領域)
- Functional connectivityでは3つのラインを調査
- 視床と大脳のconnectivity
- 視床にある16個の対象領域同士のconnectivity
- 視床とその周辺のconnectivity
- 上記に加えて血液検査と、神経伝達物質とその受容器の密度も調査
- 6ヶ月後の検査
- 拡張グラスゴーアウトカムスケール(GOSE)とRivermead Postconcussion Symptom Questionnaire(RPE)を実施
- コントロール群
- 上記と同じ検査を非軽度頭部外傷受傷者(76名)にも実施
研究結果
- 症状の回復具合
- 51名(47.2%)の軽度頭部外傷受傷者はGOSEやRPEの結果、症状や機能が回復していなかった(慢性群)
- 最も多い症状は疲労感、次に集中力の欠如、そして頭痛があった
- 慢性群と解消群での視床の機能差
- 慢性群では視床とその周辺のconnectivity、そして視床と大脳のconnectivityが有意に高かった
- 特に右前腹側核と中・下側頭回、右前外側背側核と下前頭回及び前帯状皮質・傍帯状回にconnectivityの増加が見られた
- 軽度頭部外傷受傷者とコントロール群との視床の機能差
- コントロール群と比較して、視床の関心領域と大脳のconnectivityに有意差があった
- 特に両側の前腹側核、右の背側外側核と大脳とにhyperconnectivityが見られた
- 視床にある16個の対象領域同士のconnectivity
- コントロール群と比較して、両側の前腹側核と右の背側外側核はそれ以外の視床の関心領域とのconnectivityが有意に高かった
- 神経伝達物質の密度
- 右前腹側核、右前外側背側核、左前腹側核ではHyperconnectivityとノルアドレナリンの密度に正の相関が見られた
- 血液検査
- 血液検査は受傷から平均2.98日後に行われたが、有意差はなかった
- 視床の体積
- 視床の体積の変化に有意差はなかった
まとめ
今回のまとめです!
- 軽度頭部外傷後では脳の器質的変化や血液バイオマーカーに変化は見られないが、視床の機能(connectivity)には急性の変化が示唆された
- 軽度頭部外傷後から6ヶ月以上症状が続いているグループでは、そうでなかったグループと比較して急性時の視床に機能差が見られた
参照資料
2 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第4版 p.16
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